事例 01虚無感・変われない・はっきりしない悩み

こんなお悩みはありませんか?

  • 気の合う友達、心を開ける他人がいない
  • 何をするにも「どうせ」と思ってしまう
  • いつも無気力で疲れやすい傾向がある
  • 自分に自信がもてない
  • はっきりしない生きづらさを感じる
  • 学校や会社に行けなくなった経験がある
  • 自分よりつらい思いをしている人はたくさんいるだろうと思う
  • 自分の居場所がわからない、根無し草の感覚
  • 特に嫌なことがなくても「死んだほうが楽かも」と考えたことがある
  • もっと自由に生きられるはずだと思うことがある

漠然とした悩み、生きづらさとは

カウンセリングに初めて来るクライアントさんは、「私の悩みはどの程度の悩みなんだろう」と心のどこかで考えたりします。

特に自分の悩みの正体がはっきりつかめない時などは、「もしかしたら大したことはないのかもしれない」「どうでもいいことで悩んでいるのかもしれない」という劣等感まじりの不安がむくむくと頭をもたげるものです。

そして、「悩んでいるならうだうだ言ってないで努力すればいいのに!」と自分を責め、自分でも自分の悩みを些末なものとして扱ってしまうことすらあります。

でも、はたしてそうなのでしょうか。

「はっきりとした原因が分からないのに、生きるのがつらい」というお悩みは、むしろ根深く、出口のない苦しいもののように思えます。

人は苦しみから逃れる機能を持っている

「私の苦しみにははっきりした原因が見当たらない」

そう思った時、人は自然と自分に原因を帰属させます。だから、自分は怠けものなんだ、甘えてるだけなんだ、弱いせいなんだと考えます。

自分のせいだから誰かに相談しても仕方がないし、相談したところで自分はきっと変われない。そう思うとみじめで、そんなくだらない自分に構いたくないからと、自分自身を見捨てたくなってしまいます。

でも、本当にそうなのでしょうか。

私たちは、熱い物からすぐ手を放します。転びそうになった時はすぐに足が前に出ます。 人には自分の命を守るために、苦しみや痛みから逃れたり対処したりする機能がちゃんと備わっているのです。

そう考えると、「苦しいのに何もする気が起きない」「理由はないけど漠然とつらい」なんてことがあるのだろうか、とちょっと不思議に思います。そしてそれがもし「その人の怠慢や甘えや弱さのせい」だというのなら、ますます不思議です。だって生き物は苦しみを避けたいはずですから。

だとすれば、そのお悩みにはちゃんと理由や意味があるのではないでしょうか。

意識と無意識

人には意識(顕在意識)と無意識(潜在意識)があります。 意識は自分で把握することが出来る部分、無意識は把握出来ない部分の事を言います。たとえば「なんだか息苦しいな…」と感じるのは意識ですが、寝ている間の自分の呼吸は無意識です。

このような意識と無意識は、実は精神面や記憶の面でも存在しています。 精神的な部分においての「無意識」には、意識の領域に置いておくことが難しいものが隠されます。つまり、何らかの事情で表に出せなかった心の葛藤や痛み、欲求などが気づかぬうちに抑圧されて、意識出来ないくらい深い場所へとしまい込まれてしまうんです。

もちろん、そのおかげで私たちは自分の本当の心の痛みに何年ももだえ苦しまずにすむこともあります。葛藤や欲求の抑圧は、もともと防衛機制といって私たちの心を守るためのシステムでもあるからです。

ただひとつ難しいのは、無意識下に心の痛みを抑圧することが、心の痛みを消すということにはならない、ということ。 無意識下にしまい込まれた感覚や感情は、時に出口を求めて何度もさまようことがあります。そしてさまよう時には、実は元の形のままではなく、まったく別の姿に形を変えてしまったりするのです。

例えば、抑圧された感覚や感情が、時を経て頭痛やお腹の痛みなど、身体症状という姿に変化することもありますし、元々の苦しみとは別の「新しいお悩み」として私たちを困らせることもあります。

私たちの悩みの底には、無意識に抑圧された葛藤や、痛みや、欲求があって、それが形を変えて「今」を作っていることがあるのです。

そう考えてみると、今感じている「大したことないかもしれない悩み」というのも、もしかしたら別の、もっと根本的な悩みのダミーとして表面に表れているのかもしれません。

そして、ひょっとしたら、ダミーだからこそいつまでも解決できないのかもしれません。 (分身の術を使える相手と戦う時は、本体を倒さないといけませんよね。)

自分の本当の悩みを探す

出口の見えない生きづらさは、少しずつじわじわと人を無気力にします。 現状を変えられない自分を責めたり、あきらめてしまいたくなることもあります。

こういう時、一つ大切なのは「そのように考えて、悩みが改善したり生きやすくなったかどうか」という視点です。

どんな考え方をしても、結局いつも変われない。 とても苦しいのに、この場所から動く気力がない。 トラウマというほどの何かがあったわけじゃないのに、いろんなことが気になって生きづらい。

悩んでも上手くいかないのなら、自分では把握できない無意識下に別の心の痛みがあるのかもしれません。 あるいは、「変わらない」「抜け出さない」ということ自体になにか意味があるのかもしれません。

それを知ることが出来たら、今までとは少し違う道のりが目の前に現れるのかもしれませんね。

  • 『フロイト全集15』 岩波書店 (訳)新宮一茂、高田珠樹、須藤訓任、道籏泰三(2012)
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