事例 17物が捨てられない・
順番通りや確認しないと気がすまない(強迫症)

戸締りやガスを消したかを何度も確認してしまう。

自分の仕事にミスがないか何度も見返してしまう。

事あるごとに手を洗わないと気が済まない。

○○しないと…という気持ちが強い。

これらは強迫の有名なエピソードです

強迫的になってしまう背景には、婦人科のホルモン、甲状腺のホルモンの調子の問題で強迫的になったり、被害的に物を考えたりする場合もあれば、事件、事故、トラブルなどのトラウマによって強迫衝動が出るようになった方もいます。

またカウンセリングでは幼少期のトイレットトレーニング時期にしつけが厳しすぎると強迫的な衝動が出やすいと言われています。

原因によって、病院に行く・漢方を飲む・食事を変える・心理療法を行う…と対処の仕方も様々です。

カウンセリングでは、その強迫的な部分が元々あるのか、それともある時から出始めたのかも含めて一緒に検討していきます。

相談例

  • ○○をしだすと納得がいくまでやめられないし、疲れていても続けてしまう
    1. 鍵を閉めたか、ガスの元栓をしめたか、などの確認
    2. 手洗い
    3. 決まった手順通りでないと何回もやりなおす
    4. ○○した数を数えないと気が済まない
  • 本人としてはそのことはそこまでやらなくてもいいことだとわかっていてもやめられない
  • まったく車が走っていない安全な状況でも赤信号を無視してわたることはいけないと思って皆が渡っていても動かないか動けない(自分では本当は渡っても問題がないことはわかっている)
  • 何度も確認しているはずなのに、それでも家の鍵を閉めたか、ガスの元栓を閉めたか、電気を消したか、窓を閉めたか、忘れ物がないかを確認しないと気がすまなくなる
  • 自分の行為が完全だったかどうか絶えず疑いを持ち、何度も確かめないと気がすまなくなる
  • 自分のある部分が汚いと感じてしまい、気がすむまで洗わないといけない感覚になる
  • 電車のつり革につかまったり、トイレに行ったりしたあとなどに、バイ菌などに汚染されたのではないかという不安がでてくる
  • いろいろなものに接触することによって汚染が広がっていくと感じるようになり、何度も手を洗ったり、何時間もお風呂に入ったりすることがある
  • 車の運転中にタイヤが何かを踏んだりすると人をひいたのではないかという不安に襲われ、その場所に戻って車を降り、誰かをひいていないかどうかを確認したことがある
  • 自分の行為が誤って人を傷つけてはいないかという不安になる
  • 決まった手順や決まった並び方をしないと気がすまない
  • 順番を間違うと最初からやり直してしまい、1つの行為に長時間を費やすことがある
  • 衣服を着るときなどに、必ず決められた順序で行わなくてはいけないと感じる
  • 特定の数字を不吉と感じ、あらゆる行為の際にその数字を避けようとすることがある
  • 左右対称でないといけないといった、ものの配置などに強くこだわる
  • 自分がしなければいけない行動をしないと天罰が下る、ひどい目にあう、不幸になる、恐ろしいことが起こる、自分が変わってしまう気がする
  • 要らなくなったものでも、いつかまた使うのではないかという思い込みから捨てられない
  • 家族などにも徹底した掃除を強要したり、戸締まりなどを自分で確認するだけでは安心できず、何度も確認させたりするなど、身近な人を巻き込んでしまうことがある
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DSM-5-TRによる強迫症の診断基準

  1. 強迫観念,強迫行為,またはその両方の存在
      強迫観念は以下の(1)(2)によって定義される:
    1. 繰り返される持続的な思考,衝動,またはイメージで,それは障害中の一時期には侵入的で不適切なものとして体験されており,たいていの人においてそれは強い不安や苦痛の原因となる.
    2. その人はその思考,衝動,またはイメージを無視したり抑え込もうとしたり,または何か他の思考や行動(例:強迫行為を行うなど)によって中和しようと試みる.
      強迫行為は以下の(1)と(2)によって定義される:
    1. 繰り返しの行動(例:手を洗う,順番に並べる,確認する)または心の中の行為(例:祈る,数える,声を出さずに言葉を繰り返す)であり,その人は強迫観念に対応して,または厳密に適用しなくてはいけないある決まりに従ってそれらの行為を行うよう駆り立てられているように感じている.
    2. その行動または心の中の行為は,不安または苦痛を避けるかまたは緩和すること,または何か恐ろしい出来事や状況を避けることを目的としている.しかしその行動または心の中の行為は,それによって中和したり予防したりしようとしていることとは現実的な意味ではつながりをもたず,または明らかに過剰である.
      :幼い児童はこれらの行動や心の中の行為の目的をはっきり述べることができないかもしれない.
  2. 強迫観念または強迫行為は時間を浪費させる(1日1時間以上かける),または臨床的に意味のある苦痛,または社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている.
  3. その障害は,物質(例:乱用薬物,医薬品)または他の医学的状態の直接的な生理学的作用によるものではない.
  4. その障害は他の精神疾患の症状ではうまく説明できない(例:全般不安症における過剰な心配.身体醜形症における容貌へのこだわり,ためこみ症における所有物を捨てたり手放したりすることの困難さ,抜毛症における抜毛,皮膚むしり症における皮膚むしり,常同運動症における常同症,摂食症における習慣的な食行動,物質関連症及び嗜癖症群における物質やギャンブルへの没頭,病気不安症における疾病をもつことへのこだわり,パラフィリア障害群における性的衝動や性的空想秩序破壊的・衝動制御・素行症群における衝動,うつ病における罪悪感の反芻,統合失調スペクトラム症及び他の精神症群における思考吹入や妄想的なこだわり,自閉スペクトラム症における反復的な行動様式).

該当すれば特定せよ

  • 病識が十分又は概ね十分:その人は強迫症の信念がまったく,またはおそらく正しくない,あるいは正しいかもしれないし,正しくないかもしれないと認識している.
  • 病識が不十分:その人は強迫症の信念がおそらく正しいと思っている.
  • 病識が欠如した・妄想的な信念を伴う:その人は強迫症の信念は正しいと完全に確信している.

    該当すれば特定せよ

  • チック関連:その人はチック症の現在症ないし既往歴がある.
American Psychiatric Association: Diagnostic and statistical manual of mental disorders, 5th ed., Washington, DC, 2013 (高橋三郎,大野裕監訳,染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,三村將,村井俊哉訳:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.東京,医学書院,2014).