事例 16
人との距離感や現実感のなさに悩む方へ
解離症・離人感の相談事例

「人と一緒にいても孤独を感じる」「自分が自分ではない気がする」。このような漠然とした不安や違和感を抱える方は少なくありません。強いストレスやトラウマが背景にある場合もあり、専門的なサポートによって安心を取り戻すことができます。本ページでは、解離症・離人感に関する具体的な相談事例をご紹介します。

解離症・離人感とは

「人との間に距離を感じる」「現実感がない」「自分が自分ではないように思える」。こうした感覚を「離人感」と呼び、強い場合には解離症と考えられることもあります。本人は日常を送っていても「生きている実感が持てない」「どこかぼんやりしている」と感じることが多く、これが人間関係の一体感を得られない要因になることがあります。

よくある症状や特徴

  • 自分を上から見下ろしているように感じる
  • ストレスがかかる場面で別の自分が対応している感覚がある
  • 周囲の人と一緒にいても孤独感が強い
  • 生きている実感がなく、心にぽっかり穴が空いたように感じる
  • 体育会系や熱意ある人を見ると引いてしまう
  • 喜びや楽しさを感じにくく、やる気が出ない
  • 原因が特にないのに「死んでしまってもいい」と思うことがある

このような「理由のない不安を感じる」状態は、強いストレスやトラウマと深く関わっていることが少なくありません。

背景にあるトラウマや家族関係

離人感や解離的な傾向は、虐待やトラウマ体験と関連している場合もあります。

  • 幼少期に感情的な交流が少なかった
  • 家族に気持ちを受け止めてもらえなかった
  • 言葉や暴力による虐待、性的ないたずらの体験
  • 機能不全家族で育ち、安心できる居場所がなかった

こうした経験から、自分を守るために「意識を飛ばす」という防衛反応が働き、それが解離症状につながることがあります。

カウンセリングでできること

カウンセリングでは、まず「漠然とした不安の正体」を一緒に整理します。そのうえで、ストレスにどう対処するか、自分の感情を安心して表現できる方法を探していきます。トラウマケアや認知行動療法などを取り入れることで、少しずつ「現実感を取り戻す」「一体感を感じる」ことが可能になります。

漠然とした不安や実感のなさに悩むことは、誰にでも起こり得る心のサインです。安心できる場で気持ちを話すことが、改善への大きな第一歩になります。一人で抱え込む前に、ぜひ私たち専門のカウンセラーにご相談ください。

よくある質問(Q&A)

解離症や離人感は治るのでしょうか?

完全に「なくす」ことを目指すよりも、「振り回されずに過ごせるようになる」ことを大切にしています。安心できる環境で気持ちを整理しながら、自分のペースで生活を整えていくことで、少しずつ現実感や落ち着きを取り戻していけます。

一時的に感じる違和感や孤独感も相談していいですか?

もちろん大丈夫です。「相談するほどではないかも」と思われることの中にも、生きづらさのヒントが隠れていることがあります。小さな違和感の段階で相談することが、安心を取り戻す大切なきっかけになります。

解離や離人感は甘えではないですか?

いいえ、決して甘えではありません。強いストレスや心の負担に反応する自然な働きです。自分を守るために心が精一杯頑張っている証拠でもあります。

どのくらい通えば良くなりますか?

期間は人によって異なりますが、「数回の相談で気持ちが整理できた」という方もいれば、「ゆっくり長く通いながら安心を取り戻す」方もいます。大切なのはご自身のペースで進められることです。

参考:DSM-5-TRによる解離性同一症の診断基準

  1. 2つまたはそれ以上の,他とはっきりと区別されるパーソナリティ状態によって特徴づけられた同一性の破綻で,文化によっては憑依体験と記述されうる.同一性の破綻とは,自己感覚や主体性感覚の明らかな不連続を意味し,感情,行動,意識,記憶,知覚,認知,および/または感覚運動機能の変容を伴う.これらの徴候や症状は他の人により観察される場合もあれば,本人から報告される場合もある.

  2. 日々の出来事,重要な個人的情報,および/または心的外傷的な出来事の想起についての空白の繰り返しであり,それらは通常の物忘れでは説明がつかない.

  3. その症状は,臨床的に意味のある苦痛,または社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている.

  4. その障害は,広く受け入れられた文化的または宗教的な慣習の正常な部分とはいえない.

    注:児童の場合,その症状は想像上の遊び友達または他の空想的遊びとしてうまく説明されるものではない.

  5. その症状は物質(例:アルコール中毒時のブラックアウトまたは混乱した行動)や他の医学的状態(例:焦点減損発作)の生理学的作用によるものではない.

American Psychiatric Association: Diagnostic and statistical manual of mental disorders, Fifth edition text revision, Washington, DC, 2022.(高橋三郎,大野裕 監訳,染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,三村將,村井俊哉,中尾智博 訳:DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル,東京,医学書院,2023).

参考:DSM-5-TRによる解離性健忘の診断基準

  1. 重要な自伝的情報で,通常,心的外傷的またはストレスの強い性質をもつものの想起が不可能であり,通常の物忘れでは説明ができない.

    注:解離性健忘のほとんどが,特定の1つまたは複数の出来事についての限局的または選択的健忘,または同一性および生活史についての全般性健忘である.

  2. その症状は,臨床的に意味のある苦痛,または社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている.

  3. その障害は,物質(例:アルコールまたは他の乱用薬物,医薬品),または神経学的病態または他の医学的病態(例:複雑部分発作,一過性全健忘,閉鎖性頭部外傷・外傷性脳損傷の後遺症,他の神経学的病態)の生理学的作用によるものではない.

  4. その障害は,解離性同一症,心的外傷後ストレス症,急性ストレス症,身体症状症,または認知症又は軽度認知障害によってうまく説明できない.

    コードするときの注:解離性とん走を伴わない解離性健忘のコードはF44.0.解離性とん走を伴う解離性健忘のコードはF44.1.

該当すれば特定せよ

  • F44.1解離性とん走を伴う:目的をもった旅行や道に迷った放浪のように見え,同一性または他の重要な自伝的情報の健忘を伴うもの

American Psychiatric Association: Diagnostic and statistical manual of mental disorders, Fifth edition text revision, Washington, DC, 2022.(高橋三郎,大野裕 監訳,染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,三村將,村井俊哉,中尾智博 訳:DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル,東京,医学書院,2023).

参考:DSM-5-TRによる離人感・現実感消失症の診断基準

  1. 離人感,現実感消失,またはその両方の持続的または反復的な体験が存在する.

    1. 離人感:自らの考え,感情,感覚,身体,または行為について,非現実,離隔,または外部の傍観者であると感じる体験(例:知覚の変化,時間感覚のゆがみ,非現実的なまたは存在しない自分,情動的および/または身体的な麻痺).

    2. 現実感消失:周囲に対して,非現実または離隔の体験(例:人または物が非現実的で,夢のような,霧がかかった,生命をもたない,または視覚的にゆがんでいる,と体験される)

  2. 離人感または現実感消失の体験の間,現実検討は正常に保たれている.

  3. その症状は,臨床的に意味のある苦痛,または社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている.

  4. その障害は,物質(例:乱用薬物,医薬品)または他の医学的状態(例:てんかん発作)の生理学的作用によるものではない.

  5. その障害は,統合失調症,パニック症,うつ病,急性ストレス症,心的外傷後ストレス症,または他の解離症のような,他の精神疾患ではうまく説明できない.

American Psychiatric Association: Diagnostic and statistical manual of mental disorders, Fifth edition text revision, Washington, DC, 2022.(高橋三郎,大野裕 監訳,染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,三村將,村井俊哉,中尾智博 訳:DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル,東京,医学書院,2023).

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