事例 18
ADHD(注意欠如多動症)と自己肯定感
自分らしさを取り戻す カウンセリング事例

忘れ物が多い、集中できない、衝動的に行動してしまう。こうした特徴から「自分はADHDなのでは?」と不安を抱える方が増えています。大切なのは診断名だけではなく、自分の得意・不得意を知り、自己肯定感を上げながら生活を整えていくことです。

本ページではADHDの特徴と二次的に生じやすい悩みを整理し、カウンセリングでできるサポートについて解説します。

ADHD(注意欠如多動症)とは

ADHDとは、不注意・多動性・衝動性といった特徴を持つ発達特性です。忘れ物やケアレスミスが多い、集中が続かない、衝動的な行動をしてしまうなど、日常生活や仕事に影響を及ぼすことがあります。

最近では大人になってから「仕事や人間関係でうまくいかず調べたらADHDの傾向があった」というケースも増えています。ADHDであってもそうでなくても、自分の傾向を理解することで、強みを伸ばし、苦手な部分は工夫やサポートで補っていくことができます。

ADHDの主な特徴(不注意・多動性・衝動性)

  • 不注意

    忘れ物が多い、集中が続かない、片付けが苦手、期限を守れない

  • 多動性

    落ち着きがない、ソワソワしてしまう、場の雰囲気を読むのが苦手

  • 衝動性

    思いつきで行動する、衝動買い、口論になりやすい、失言が多い

本人は「やめたい」と思っていても止められなかったり、気づいたら同じことを繰り返してしまうことも多いため、自信を失いやすいのが特徴です。そのため、失われた自信をとりもどしていくことが大切なプロセスの1つとなります。

感覚過敏や二次障害との関わり

ADHDには聴覚・視覚・嗅覚・触覚の過敏さが伴うこともあります。たとえば騒音や、光の強さ、ちょっとした臭いなどの刺激が、日常生活で大きなストレスになることがあります。

また、ADHDから派生して不安症、うつ病、依存症、摂食症、睡眠障害などの二次障害が起こるケースも少なくありません。これらも自己肯定感の低下と深くつながっています。

子どもから大人へと移行する際の変化

ADHDは年齢によって現れ方が変わります。

  • 子ども:多動性(じっとしていられない)が目立つ
  • 大人:多動性は弱まるが、不注意(忘れ物・集中できない)が強くなる

多動性や不注意など、子どもの頃は「個性」とみなされてきた行動も、大人になると「責任感がない」「だらしない」と誤解され、周囲の評価が厳しくなりがちです。その結果、劣等感が強まり、自己肯定感が低下することもあります。

カウンセリングでできること

カウンセリングでは、ADHDの特性を「問題」ではなく「特徴」としてとらえ直し、環境調整や行動の工夫を一緒に考えます。また、心理療法などを通して自己肯定感を改善し、自分らしく生きやすい方法を探っていきます。

自分の特性を理解し、工夫しながら歩んでいけば、むしろ強みとして活かすような考え方もできるようになっていきます。

一人で抱え込まずにご相談ください。臨床経験豊富なカウンセラーが、安心できる方法を一緒に見つけていきます。

よくある質問(Q&A)

ADHDは治りますか?

ADHDは「治す」というより「うまくつきあう」ことを目指します。環境を整えたり、自分に合ったやり方を見つけることで、困りごとが減り、生活がぐっと楽になります。また、苦手な場面に対しての考え方や捉え方も見直すことで、ストレスに対しての対応力も上がります。

大人になってからADHDに気づく人も多いですか?

はい、とても多いです。子どもの頃は「ちょっと落ち着きがない」と個性として受け入れられていたことが、大人になってから「責任感がない」と誤解されて気づくケースも少なくありません。大人になってから相談される方もたくさんいますので、ご安心ください。

ADHDの人は自己肯定感が低くなりやすいのですか?

「頑張っているのに失敗する」「周囲に誤解される」といった経験が続くことで、自信をなくしやすい傾向があります。ですが、特性を理解し工夫したり、過去の傷つきを癒していくことで、徐々に自己肯定感も回復していきます。

子どもの頃からの困りごとと、大人になってからの困りごとは違いますか?

個人差はありますが、子どもの頃は多動性(じっとできない)が目立ちやすく、大人になると不注意(忘れ物・集中できない)が目立ちやすくなると言われています。ライフステージによって表れ方が変わるため、年齢に合わせたサポートが必要です。

参考:DSM-5-TRによる注意欠如多動症の診断基準

  1. (1)および/または(2)によって特徴づけられる,不注意および/または多動-衝動性の持続的な様式で,機能または発達の妨げとなっているもの:

    1. 不注意:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり,その程度は発達の水準に不相応で,社会的および学業的/職業的活動に直接,悪影響を及ぼすほどである:

      注:それらの症状は,単なる反抗的行動,挑戦,敵意の表れではなく,課題や指示を理解できないことでもない.青年期後期および成人(17歳以上)では,少なくとも5つ以上の症状が必要である.

      1. 学業,仕事,または他の活動中に,しばしば綿密に注意することができない,または不注意な間違いをする(例:細部を見過ごしたり,見逃してしまう,作業が不正確である).

      2. 課題または遊びの活動中に,しばしば注意を持続することが困難である(例:講義,会話,または長時間の読書に集中し続けることが難しい).

      3. 直接話しかけられたときに,しばしば聞いていないように見える(例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ,心がどこか他所にあるように見える).

      4. しばしば指示に従えず,学業,用事,職場での義務をやり遂げることができない(例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる,また容易に脱線する).

      5. 課題や活動を順序立てることがしばしば困難である(例:一連の課題を遂行することが難しい,資料や持ち物を整理しておくことが難しい,作業が乱雑でまとまりがない,時間の管理が苦手,締め切りを守れない).

      6. 精神的努力の持続を要する課題(例:学業や宿題,青年期後期および成人では報告書の作成,書類に漏れなく記入すること,長い文書を見直すこと)に従事することをしばしば避ける,嫌う,またはいやいや行う.

      7. 課題や活動に必要なもの(例:学校教材,鉛筆,本,道具,財布,鍵,書類,眼鏡,携帯電話)をしばしばなくしてしまう.

      8. しばしば外的な刺激(青年期後期および成人では無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう.

      9. しばしば日々の活動(例:用事を足すこと,お使いをすること,青年期後期および成人では,電話を折り返しかけること,お金の支払い,会合の約束を守ること)で忘れっぽい.

    2. 多動-衝動性:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり,その程度は発達の水準に不相応で,社会的および学業的/職業的活動に直接,悪影響を及ぼすほどである:

      注:それらの症状は,単なる反抗的態度,挑戦,敵意などの表れではなく,課題や指示を理解できないことでもない.青年期後期および成人(17歳以上)では,少なくとも5つ以上の症状が必要である.

      1. しばしば手足をそわそわ動かしたりとんとん叩いたりする,またはいすの上でもじもじする.

      2. 席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる(例:教室,職場,他の作業場所で,またはそこにとどまることを要求される他の場面で,自分の場所を離れる).

      3. 不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする(注:青年または成人では,落ち着かない感じのみに限られるかもしれない).

      4. 静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない.

      5. しばしば“じっとしていない”,またはまるで“エンジンで動かされているように”行動する(例:レストランや会議に長時間とどまることができないかまたは不快に感じる;他の人達には,落ち着かないとか,一緒にいることが困難と感じられるかもしれない).

      6. しばしばしゃべりすぎる.

      7. しばしば質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう(例:他の人達の言葉の続きを言ってしまう;会話で自分の番を待つことができない).

      8. しばしば自分の順番を待つことが困難である(例:列に並んでいるとき).

      9. しばしば他人を妨害し,邪魔する(例:会話,ゲーム,または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では,他人のしていることに口出ししたり,横取りすることがあるかもしれない).

  2. 不注意または多動-衝動性の症状のうちのいくつもが12歳になる前から存在していた.

  3. 不注意または多動-衝動性の症状のうちのいくつもが2つ以上の状況(例:家庭,学校,職場;友人や親戚といるとき;他の活動中)において存在する.

  4. これらの症状が,社会的,学業的,または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある.

  5. その症状は,統合失調症,または他の精神症の経過中にのみ起こるものではなく,他の精神疾患(例:気分症,不安症,解離症,パーソナリティ症,物質中毒または離脱)ではうまく説明されない.

いずれかを特定せよ

F90.2不注意・多動-衝動性が共にみられる状態像:過去6カ月間,基準A1(不注意)と基準A2(多動-衝動性)をともに満たしている場合

F90.0不注意が優勢にみられる状態像:過去6カ月間,基準A1(不注意)を満たすが基準A2(多動-衝動性)を満たさない場合

F90.1多動-衝動性が優勢にみられる状態像:過去6カ月間,基準A2(多動-衝動性)を満たすが基準A1(不注意)を満たさない場合

該当すれば特定せよ

  • 部分寛解:以前はすべての基準を満たしていたが,過去6カ月間はより少ない基準数を満たしており,それらの症状が,社会的,学業的,または職業的機能に現在も障害を及ぼしている場合

現在の重症度を特定せよ

  • 軽度:診断を下すのに必要な項目数以上の症状はあったとしても少なく,症状がもたらす社会的または職業的機能への障害はわずかでしかない.

  • 中等度: 症状または機能障害は,「軽度」と「重度」の間にある.

  • 重度:診断を下すのに必要な項目数以上に多くの症状がある,またはいくつかの症状が特に重度である,または症状が社会的または職業的機能に著しい障害をもたらしている.

American Psychiatric Association: Diagnostic and statistical manual of mental disorders, Fifth edition text revision, Washington, DC, 2022.(高橋三郎,大野裕 監訳,染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,三村將,村井俊哉,中尾智博 訳:DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル,東京,医学書院,2023).

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