事例 15適応反応症

適応反応症とは、「特定の環境や事柄に対して強いストレスを感じ適応しにくい」状態のことを指します。

例えば会社に行くときに涙が出てくる、動悸が止まらない、強い不安感があって過敏になるなどが分かりやすい例です。

会社の何かが強いストレスとなって、適応できなくなっている状態です。適応反応症はあくまで「特定の対象」に対してのみ出る症状なので、会社に行く必要がなくなるとこの症状も出てこないというのも特徴です。

ですのでストレス源から離れることがもちろん対処の一つとなるわけですが、その「ストレス源」がいくつもあると、そのすべてから離れて生活するのは困難になってしまします。

カウンセリングでは、ご相談者様の「ストレス源」がご本人の気質や過去の出来事、その他の要因とどのようにつながりがあるのかを分析し、ストレス源から離れるだけでなく、ストレス源が気にならなくなるためのアプローチも取り入れて、生きやすさを一緒に探します。

もちろん、ただ話を聞いてほしいというだけでも大丈夫です。

相談例

仕事、家族内での問題、自分や家族の病気、恋愛、学校などでのストレスによって以下のような症状のどれか(複数)が現れる。

  • 気分が落ち込む(その原因は自分でもわかるストレスがかかった時点から)
  • 涙もろくなっている(その原因は自分でもわかるストレスがかかった時点から)
  • 意欲が低下している(その原因は自分でもわかるストレスがかかった時点から)
  • 不安になっている(その原因は自分でもわかるストレスがかかった時点から)
  • 動悸がする(その原因は自分でもわかるストレスがかかった時点から)
  • 焦りが生じている(その原因は自分でもわかるストレスがかかった時点から)
  • 神経が過敏になっている(その原因は自分でもわかるストレスがかかった時点から)
  • 緊張感が高くなっている(その原因は自分でもわかるストレスがかかった時点から)
  • イライラする(その原因は自分でもわかるストレスがかかった時点から)
  • 朝起きるのがしんどい(その原因は自分でもわかるストレスがかかった時点から)
  • 職場で突然泣きたくなる
  • 集中力が低下する
  • ストレスの原因となっている状況や事柄を考えると、憂鬱になる
  • ストレスの原因となっている状況や事柄を考えると、不安や緊張が強くなる
  • ストレスの原因となっている状況や事柄を考えると、社会生活や家庭内での生活が困難になる
  • ストレスが身体に現れる(動悸、めまい、頭痛、かぜ様の症状、腰痛などの症状)
  • ストレスの原因から離れている時間(休日など)は症状が軽くなる
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DSM-5による適応反応症の診断基準

  1. はっきりと確認できるストレス因に反応して,そのストレス因の始まりから3カ月以内に情動面または行動面の症状が出現
  2. これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので,それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある.
    1. 症状の重症度や表現型に影響を与えうる外的文脈や文化的要因を考慮に入れても,そのストレス因に不釣り合いな程度や強度をもつ著しい苦痛
    2. 社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の重大な障害
  3. そのストレス関連症は他の精神疾患の基準を満たしていないし,すでに存在している精神疾患の単なる悪化でもない.
  4. その症状は正常の死別反応を示すものではなく,遷延性悲嘆症ではうまく説明されない.
  5. そのストレス因,またはその結果がひとたび終結すると,症状がその後さらに6カ月以上持続することはない.

    該当すれば特定せよ

    • 急性:その障害の持続が6カ月未満
    • 持続性(慢性):その障害が6カ月またはより長く続く.

    いずれかを特定せよ

    • F43.21抑うつ気分を伴う:優勢にみられるものが,落ち込み,涙もろさ,または絶望感である場合
    • F43.22不安を伴う:優勢にみられるものが,神経質,心配,過敏.または分離不安である場合
    • F43.23不安と抑うつ気分の混合を伴う:優勢にみられるものが,抑うつと不安の組み合わせである場合
    • F43.24素行の障害を伴う:優勢にみられるものが,素行の異常である場合
    • F43.25情動と素行の障害の混合を伴う:優勢にみられるものが,情動的症状(例:抑うつ,不安)と素行の異常の両方である場合
    • F43.20特定不能:適応反応症のどの特定の病型にも分類できない不適応的な反応である場合

    該当すれば特定せよ

    • 急性:この特定用語は,症状の持続が6カ月未満の場合に使用することができる.
    • 持続性(慢性):この特定用語は,症状が6カ月以上持続する場合に使用することができる定義に)よると,ストレス因またはその結果の終結から6ヵ月を超えて症状が持続することはない.したがって,持続性の特定用語は,慢性的なストレス因または永続的な結果をもたらすストレス因に対する障害の持続期間が6カ月を超える場合に適用される.
American Psychiatric Association: Diagnostic and statistical manual of mental disorders, Fifth edition text revision, Washington, DC, 2022.(高橋三郎,大野裕 監訳,染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,三村將,村井俊哉,中尾智博 訳:DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル,東京,医学書院,2023).