事例 10
仕事・学校に行けないお悩み
不登校・職場ストレスの
カウンセリング事例
学校や仕事、アルバイトに「行きたくない・続かない」と感じる悩みは、本人にとってもご家族にとっても大きな不安の種です。
特に不登校のお悩みや職場の人間関係ストレスは、年齢や状況を問わずよく寄せられるご相談の一つです。
本ページでは、実際の相談事例をもとに、心理カウンセリングでの向き合い方や具体的なサポート方法をご紹介します。
目次
学業・進路に関する相談事例
学校に行きたくない・行けない
学校に行きたくなくなったり、実際に行けなくなってしまう背景には、実にさまざまな要因が考えられます。学生、特に高校生頃までの子供にとって、学校は社会そのものであり、「家以外の全て」と言っても過言ではありません。
学校で心地よく過ごせるかはその子のストレスや疲労度に直結し、友人や先輩、先生との関係がうまくいかなければ、子どもは大人が想像する以上の緊張や絶望を感じます。ご家庭の事情や学校の環境によっては、勉学・進学へのプレッシャーが隠れた負担になっていることもあるかもしれません。
中には、自分が本当は何がつらくて学校に行きたくないのかをうまく把握できなかったり、あえて言語化しないようにすることで心を守っている子供もいます。そういう子の保護者から見れば「普段は楽しそうにしているのに、平日の朝になると急に調子を崩してしまう」ように見える場合もあるでしょう。
学校に行きたくないと感じるお子様・学生の方からは、
- 心を割って話せる友人がいない、相談できる先生がいない
- いじめを受けたり、からかわれたりしている
- 親から離れるとものすごく不安になってしまう
- 周りの人からどう見られているのか心配になる
- 勉強がつらい、特定の授業がつらい
- 理由は分からないが朝になると身体がうごかない
といったご相談がよく聞かれます。
保護者の方からは
- 子供が学校を休んでしまってどうしたらいいのか分からない
- 子供が学校に行きたくない理由を話さない
- このまま長期化し引きこもり状態になる事が不安
- 不登校を許容しようと思うものの、どうしても焦ってしまう
- 子供との関わり方が分からない、親子関係が悪化してしまった
といったご相談が多いです。
不登校や登校しぶりの背景には一人ひとり異なる事情や思いが隠れています。カウンセリングの際は、お子様が安心してお話できることを最優先にしつつ、まずはどんなことで困っていて、何を感じているのかを丁寧に聞きとっていく必要があります。
職場・仕事に関する相談事例
職場やアルバイトをすぐ辞めてしまう
「仕事を始めてもすぐ嫌になってしまう」「職場に行くと意欲が出ない」というご相談も少なくありません。
職場の人間関係や業務量、自信のなさなど、お悩みの原因が明確な場合もあれば、「理由ははっきりしないけど、だんだんやる気がなくなってくる」「1つの場所に長く居続けるのが苦痛に感じる」といったように、なぜ仕事が嫌なのか、理由がはっきりしない場合もあります。
よくお聞きするお悩みとしては
- 仕事やバイトが続かない
- 最初は意欲があるのに、だんだん億劫になってくる
- どの職場でも人間関係で悩んでしまう
- 一度ミスをするとすぐに辞めたくなる
- 一定期間がたつと仕事の嫌な部分ばかりが見えてくる
- そこまでストレスを感じていないのに、身体に症状が出ていけなくなる
などが挙げられます。
仕事が続かないことに悩んでいる場合は、職場の問題だけでなく、過去のトラウマ、不安感、対人関係への過敏さなども含めて総合的にお悩みを分析していくことで、必要なケアが見えてきます。
また、必要に応じて、医療機関へのご紹介を含めたサポートを行うこともあります。
家族関係に関する相談事例
子どもが学校や仕事に行けないとき、親ができること
学校に行けない・仕事が続かないなどのお悩みは、ご本人だけのものではありません。常に近くで見守っているご家族も、不安や焦りでいっぱいになります。親としてどんな態度でいるべきなのか、どういう言葉をかけるべきなのか悩み、自分のささいな言動が子供にダメージを与えるかもしれないと感じることもあるかもしれません。
カウンセリングは、悩みの渦中にいるご本人だけではなく、関わり方に困っている周囲の方にも必要なサポートです。特に家族内においては、家族の問題を家族だけで解決しようと思うと、お互いの思いや配慮が錯綜し、かえってすれ違ってしまうことも多々あります。適切な第三者への相談を通して客観的に状況を整理し、まずはご家族が少しでも安心できることが、結果的にはご本人の回復にもつながります。
カウンセリングでできること
学校や仕事に行けない、続かないといったお悩みは、その経験を重ねるにつれて自己肯定感の著しい低下につながります。
カウンセリングでは、学校や職場に行きたくない気持ちへの対処法や職場ストレスの解消方法を一緒に探し、安心できるサポートを行います。どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問(Q&A)
学校や仕事に行きたくないのは甘えではないですか?
強いストレスや心身の疲れが積み重なると、「行きたくても体が動かない」という状態になることがあります。また、お悩みの背景にはASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)や不安症(社交不安症)、回避性パーソナリティ症の傾向などが影響することも考えられます。さまざまな要因を整理しながら、安心して取り組める方法を探すことが大切です。
不登校の子どもに、親はどんな声かけをすればいいですか?
「早く学校に行きなさい」と無理に促すことは逆効果になる場合があります。まずは「心配しているよ」「話せるときに聞かせてね」といった安心感を伝える声かけが有効です。お子さまの性格やこれまでの経験によって個人差もあるため、詳しくはご相談ください。
アルバイトや仕事をすぐ辞めてしまうのは性格の問題でしょうか?
必ずしも性格だけの問題ではありません。人間関係のストレスや過去の経験、不安の感じやすさなどが影響していることもあります。カウンセリングでは「職場でのストレス対処法」や「安心できる働き方の工夫」を練習していきます。
子どもが学校や仕事に行けないとき、親が代わりに責任を背負うしかないのでしょうか?
ご家族がすべてを背負う必要はありません。家族療法という分野では、家族のお悩みに第三者を入れることが大事だと言われています。ご家族のサポートは大切ですが、子どもが自分の気持ちを整理できるよう、場を整えることが重要です。カウンセリングを通じて、親も子どもも安心できる関係づくりをお手伝いします。
相談に行くのは本人でなければいけませんか?
ご本人だけでなく、保護者やご家族の方が相談に来られるケースも多くあります。「どう関わればよいか分からない」と悩む親御さんのご相談も大切なサポートの一環です。
参考:DSM-5-TRによる自閉スペクトラム症の診断基準
複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があり,現時点または病歴によって,以下のすべてにより明らかになる(以下の例は一例であり,網羅したものではない;本文参照).
相互の対人的-情緒的関係の欠落で,例えば,対人的に異常な近づき方や通常の会話のやりとりのできないことといったものから,興味,情動,または感情を共有することの少なさ,社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ.
対人的相互反応で非言語的コミュニケーション行動を用いることの欠陥,例えば,統合の悪い言語的と非言語的コミュニケーションから,視線を合わせることと身振りの異常,または身振りの理解やその使用の欠陥,顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ.
人間関係を発展させ,維持し,それを理解することの欠陥で,例えば,さまざまな社会的状況に合った行動に調整することの困難さから,想像遊びを他者と一緒にしたり友人を作ることの困難さ,または仲間に対する興味の欠如に及ぶ.
行動,興味,または活動の限定された反復的な様式で,現在または病歴によって,以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり,網羅したものではない;本文参照).
常同的または反復的な身体の運動,物の使用,または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動,反響言語,独特な言い回し).
同一性への固執,習慣への頑ななこだわり,または言語的,非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛,移行することの困難さ,柔軟性に欠ける思考様式,儀式のようなあいさつの習慣,毎日同じ道順をたどったり,同じ食物を食べたりすることへの要求)
強度または対象において異常なほど,きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭,過度に限局したまたは固執した興味)
感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ,または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや温度に無関心のように見える,特定の音または触感に逆の反応をする,対象を過度に嗅いだり触れたりする,光または動きを見ることに熱中する)
症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまでは症状は完全に明らかにならないかもしれないし,その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある).
その症状は,社会的,職業的,または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている.
これらの障害は,知的発達症(知的能力障害)または全般的発達遅延ではうまく説明されない.知的発達症と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり,自閉スペクトラム症と知的発達症の併存の診断を下すためには,社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない.
注:DSM-IVで自閉性障害,アスペルガー障害,または特定不能の広汎性発達障害の診断が十分確定しているものには,自閉スペクトラム症の診断が下される.社会的コミュニケーションの著しい欠陥を認めるが,それ以外は自閉スペクトラム症の診断基準を満たさないものは,社会的(語用論的)コミュニケーション症として評価されるべきである.
現在の重症度を特定せよ,社会的コミュニケーションの障害と限定された反復的な行動様式に基づく(表2参照).
非常に十分な支援を要する
十分な支援を要する
支援を要する
該当すれば特定せよ
知能の障害を伴う,または伴わない
言語の障害を伴う,または伴わない
該当すれば特定せよ
関連する既知の遺伝学的疾患または他の医学的状態,または環境要因(コードするときの注:関連する他の医学的状態または遺伝学的疾患を特定するための追加のコードを用いること)
関連する他の神経発達症,精神疾患,または行動障害
該当すれば特定せよ
カタトニアを伴う(基準については,他の精神疾患に関連するカタトニアの診断基準を参照せよ,131頁の定義参照)〔コードするときの注:カタトニアの併存を示すため,自閉スペクトラム症に関連するカタトニアF06.1の追加コードを用いること〕
表2 自閉スペクトラム症の重症度水準
重症度水準 社会的コミュニケーション 限局された反復的な行動 レベル3
「非常に十分な支援を要する」言語的および非言語的社会的コミュニケーション技能の重篤な欠陥が,重篤な機能障害,対人的相互反応の開始の非常な制限,および他者からの対人的申し出に対する最小限の反応などを引き起こしている.例えば,理解できる発話にわずかの言葉しかなくて相互反応をほとんど起こさなかったり,相互反応を起こす場合でも,必要があるときのみに異常な近づき方をしたり,非常に直接的な近づき方のみに反応したりするような人 行動の柔軟性のなさ,変化に対処することへの極度の困難さ,またはあらゆる分野において機能することを著しく妨げるような他の限局された反復的な行動.焦点または活動を変えることへの強い苦痛や困難さ レベル2
「十分な支援を要する」言語的および非言語的社会的コミュニケーション技能の著しい欠陥で,支援がなされている場面でも社会的機能障害が明らかであったり,対人的相互反応を開始することが制限されていたり,他者からの対人的申し出に対する反応が少ないか異常であったりする.例えば,単文しか話さず,相互反応が狭い特定の興味に限られ,著しく奇妙な非言語的コミュニケーションを行うような人 行動の柔軟性のなさ,変化に対処することへの困難さ,または他の限局された反復的な行動.事情を知らない人にも明らかなほど高頻度に認められ,さまざまな状況で機能することを妨げている.焦点または活動を変えることへの苦痛や困難さ レベル1
「支援を要する」いつもの支援がないと,社会的コミュニケーションの欠陥が目立った機能障害を引き起こす.
対人的相互反応を起こすことが困難であるし,他者からの対人的申し出に対して非定型のまたはうまくいかない反応をするような事例がいくつもはっきりとある.対人的相互反応への興味が低下しているように見えることもある.例えば,完全な文章で話しコミュニケーションに参加することができるのに,その人は他者との会話のやりとりに失敗したり,友人を作ろうとする試みは変な風で,たいていうまくいかない行動の柔軟性のなさが,1つまたは複数の状況で,機能することの著しい妨げの原因となっている.組織化や計画の立案をすることでの問題が自立を妨げている.
American Psychiatric Association: Diagnostic and statistical manual of mental disorders, Fifth edition text revision, Washington, DC, 2022.(高橋三郎,大野裕 監訳,染矢俊幸,神庭重信,尾崎紀夫,三村將,村井俊哉,中尾智博 訳:DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル,東京,医学書院,2023).
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